「そのことなら、もう大丈夫だと思うよ。」
「…え。」
「後でお父さんも一緒になると思うけど、亮から連絡があったときに大体の話はしてあるからね。」
「……。」
よ…良かった……
ダメだ腰抜けたかも…
「亮の連れて来た子だしね。そこはちゃんと分かってるから。」
優しく微笑む姿がどことなく先輩に似てる。
あれ…亮くんが前に言ってたお姉さんって、由紀さんのこと?
そういえば彼の呼び方も呼び捨てだ。
「由紀、ここにいるの?」
「おっと……はい、ここです。」
今までのだらっとした態度が一変してサッと扉をあける。
そこには亮くんのお母さんが立っていた。
表情はさっき会ったときとほとんど変わらない。
「楓さん。」
「は、はい…」
「お腹の子のこと…ごめんなさいね。」
部屋に入って来て私の近くに座ったお母さんからは微かにお香のにおいがした。
「あ、あの…子供のことは……私が…」
私が彼のことを誘って…
「いいえ。…亮の責任。それは、あの子がとるべき責任よ。一生をかけてね。」
「一生……」
それって…
結婚を許してくれるってことだよね…
「由紀、食事の支度しておいて。」
「はい。」
由紀さんが部屋から出ていった。
二人だけ残された空間に少しの沈黙が流れる。
「楓さん、体調は?まだ安定期とはいかないでしょ?ご飯は食べてるの?」
「今日は…その、だいぶ良くて…時々亮くんが料理を作ってくれていたりして、少しずつ食べるようにしてます。すごく優しくしていただいてて…」
「亮が料理?…まぁ……下手な料理でしょう、ごめんなさいね。あの子家事全般が小さいころからダメなのよ…」
母の顔だ。
とっても優しい顔。
「いえ…とても良くしてもらってます。私が体調が悪いときなんて特に。」
「そう…」
「あの…初めてお会いするのに、こんなに親切にしてもらって…ありがとうございます。」
