課長と私


「おまたせしました。」


彼がリビングの扉を開く。


「あ!?お姉ちゃん!!!!」

「雫!あんたいつ戻って来たの?」


甲高い声が耳に届く。
妹の雫が学校から帰って来ていた。
今年大学4年生。絶賛就活生だ。


「わ……本当にイケメンだ……こわっ」

「こわって何よ…」

「いや、あの、お姉ちゃんで大丈夫ですか?間違えてないですか?」


近くに寄って来て彼に問い詰める。


「大丈夫だよ。雫ちゃん。…初めまして、柳瀬亮です。」

「……しゃ、しゃべった!!」


いや、そりゃ喋りますとも…

自分の名前を呼ばれ、急に苦しそうに胸を掴む。
やっぱり私の妹だ。

そして雫は重度のイケメン好き。母に似たのだ。


「き…着替えてくる。お母さん私の分も残しておいてよ?」

「はいはい。………柳瀬さん。さっきは本当にごめんなさい。咄嗟に体が動いてしまって…」


お母さんが先輩に頭を下げた。
一瞬戸惑いながらもすぐに「顔を上げてください。」と声をかける。


「全て、楓さんのことを思ってのことだと思いますので…気にしないでください。」

「お洋服汚れちゃったわね…ごめんなさいね。すぐに乾かすから…」

「いえ、代わりに洋服を貸してもらっていますし、大丈夫です。」


穏便に事が済んで本当に良かった。
雰囲気もだんだん良くなり、雫が2階から降りてくるころにはお母さんに笑顔が戻っていた。