課長と私


「あの…すいません…いろいろとご報告が遅れまして…」

「いや、気にするな。結婚するのに別々の家に暮らしているのがおかしいんだから。」

「結婚すること…許してくれますか。」

「最初から反対するつもりは無かったんだ。母さんから少しずつ話は聞いていたし…ちょっと状況が変わったがね。」


私は話を聞きながら、優しく自分のお腹を触る。


「でも、反対するつもりはない。」

「…ありがとうございました。」


扉の向こうで深く深く頭を下げる彼の姿が見えるようだ。

お母さんにも、お父さんにも本当に感謝しなくてはいけない。
親孝行しよう。こんな娘だけど、彼と力を合わせて。


「楓。聞いてるんだろう。」

「へっ!?」


閉まっていた扉が開き、お父さんに声をかけられる。
そのあとからお父さんのパンツを借りた先輩が出てくる。
やっぱり丈が合っていない。


「楓ちゃん、聞いてたの?」

「……はい。ごめんなさい…」

「盗み聞きだ。………でも、良かったね。」


本当に心から出た言葉のようだった。ホッとした感じが声色に出ている。
彼なりに緊張もしていたらしい。


「本当…良かった。」

「お父さんの後、ついてけばいいの?」


私を通り過ぎて、そそくさとリビングに向かっていくお父さんの背中を指さす。
お父さんは私が何をしに来たのか分かっているらしい。


「あ、はい。母が皆でケーキを食べようって…」

「楓ちゃんが好きなやつだ。」

「そうです、チーズケーキ。」

「楽しみ。…行こうか。」


私の背中をポンと優しく触れる。