実家に連絡してから数日は、吐き気と頭痛がほぼ毎日続いた。
確かにこれじゃ会社に行っても使い物にならない。
会社に行けない間緩奈からは毎日のように連絡がきた。
今度はお見舞いに来てくれるらしい。でも、半分は同居生活を見たいだけらしい。
「うぅ……」
「気持ち悪い?水飲む?」
「あ…もらいます…すいません……」
「いいよ、気にしないで。…明日大丈夫そう?」
台所から水を持ってきてくれた先輩が私の隣に座る。
「大丈夫です。なんとかしてみせます…最近この感覚にも慣れてきました。」
「何それ大丈夫?」
「だって…明日は私の実家で、そのあとから明後日は亮くんの実家ですもん。盛りだくさんですもん…」
「ごめんね、その日しか時間取れないらしくって。…本当、無理はしないで。」
優しく背中を撫でて私を自分に寄りかからせる。
「早く楓ちゃんが良くなりますように」
背中をポンポンとさする。
小さい子をあやすように。
「ふふふ…」
「良くなった?」
「そんな即効性ないですよね?」
「どうかな。じゃあ…これは?」
先輩の左手が私の頬に触れて少し上を向く。
すぐそこにあった顔がもっと近くに来て、唇にじんわり暖かいものが触れる。
最近は具合が悪くてキスするのも久々だ。
…なんか気持ちいいかも。
「これは…なかなか即効性がありそうですね……」
しどろもどろになりながら言葉を返す。
「そ?じゃあもっとする?それとも…毎日コース?」
「…ど…どっちもはダメですか?」
「…いいよ。わがままだなぁ楓ちゃんは。」
「えっ。亮くんだって嬉しそうなくせに…」
暖かく微笑む彼がすねた私の顔をもう一度自分に向けさせる。
「俺もしたかった。」
どちらともなく唇を合わせる。
唇を合わせてる間、不思議と具合の悪さは感じられなかった。
本当に薬より効き目があるかも知れない。
