課長と私


「ぁ…いや、なんでも、何でもないですごめんなさい。」

「嘘つき。」

「違うんです今のは…えーっと、今のはー…」

「楓ちゃん痩せた?具合悪い?」


顔に少しかかった髪を右手ですくう。
そのまま頬に触れるその手が暖かくて心地よかった。


「え?…うーん、ちょっとボーっとするだけで…」

「風邪?…俺のこと待ってるから?」

「違いますよ、私が勝手に待ってるだけです。」

「……体調崩したら心配するでしょ……だから、早く帰らないとね。」


ぽんぽんと大きな手を頭にのせる。
体の中の毒素が抜けたような…

いつの間にかデトックス効果を習得していたようだ。


「…待ってます。」

「だから待たなくていいって。」

「待ってます。」

「先にベッドに入っててくれれば夜這いに行くのに。」

「尚更、起きてます。」


狭い一室で小さく笑いあった。
もっともっとこの時間が続けばいいのに。


「楓~?どこ~?」

「あっ緩奈…!」


ふいに声が出てしまった。


「ここかー!?そろそ戻らないと……あっ!か、課長!すいません!あ、えっとお邪魔しました!」


給湯室を除きにきた緩奈が彼を見て一瞬で態度が変わる。
もう緩奈にはバレているからか先輩は全く同様していない。


「いーよ、俺もそろそろ行くところ。」

「わぁ…なんか、こうやって2人でいるところ初めて見たから…なんかなぁ。」