あ……あの野郎……(本人の前では絶対言えない)
「…あー……あの…」
せっかくまとめた髪を元に戻した。
「…ほら、今はそんなことより…早くこの案件を完成させるんだろ…。」
藤崎の声のトーンがガタンと落ちた。
お互いに冷静になったようだ。
「ごめん。」
なぜだかそんな言葉が私の口から出た。
「何で。」
「いや…何で、だろう…」
「お前のこと好きだなんて、物好きもいたもんだなー…」
「何それ、あんたに言われたくないんだけど。」
「……物好きは俺か…」
彼が言った最後の言葉は独り言のように小さく、うまく聞き取れなかった。
すっかりシーンとした部屋に携帯の着信音が響く。
お迎えの呼び出しだ。
「集中力切れた。…今日はここまでにしよう…それで、明日完成させよう。」
「あ、うん…。問題あるところ、ピックアップして改善策まで考えてくる。」
藤崎との会議はここまでで終わった。
ここで終わって本当に良かった。
なぜかって、私の頭はもうこの首元にある赤い痕のことを張本人に問い詰めることしか考えられないからだ。
急いでコンビニに向かう。
