「楓…ちゃん。泣い…てんの…?」
俯く私の耳にまだ本調子ではない優しい声が届く。
「せ…んぱ…ぃっ…」
「何で…泣いてんの…。」
「誰のせいだと…っ…もぉ…バカ…」
「バカって……何で手、怪我して……こっち…来て」
うまく力が入らないのか、右手を私の方に伸ばすだけでも大変そうだ。
困ったように笑う彼の手を両手で包み込む。
「楓ちゃん…あの日、楓ちゃんのこと…傷つけてごめんね。」
「そんなっ…ひどいこと言ったのは私で…!」
「聞いて……あの時、言ったけど……好きでもない人…自分の部屋にあげたりしないよ…合鍵も…渡さない。」
静かな病室に響く低い声。
何でこんなに安心するんだろう。
「楓ちゃんのこと…家から追い出すみたいなことして……体調崩して……」
「……。」
「俺…思ったよりもずっと……楓ちゃんに依存してたみたい…」
ボロボロと流れていく涙でうまく喋れない私を見てうっすらと笑う彼。
私に握られていた手を伸ばして頬を伝う涙を拭きとってくれる。
「楓。」
「…はい…。」
「…帰って来てほしい。」
「…は…ぃ…っ」
「泣かないで…」
「すいま…せっ」
涙を拭きとる手が足りない。
鼻水さえも出てきてしまう。
「おいで…」
少しだけ起こした上体で私のことを受け止めてくれる。
久しぶりに触れたその体は私が知っているものよりも骨ばっている感じがしたが
覚えているぬくもりはそのままだった。
