病院に着いて、先輩は担架で集中治療室に運ばれて行く。
治療中のランプが光る中、手術室前の椅子にポツンと座る。
まだ日中にも関わらず周りは静かだ。
「楓!」
「須藤!」
聞きなれた声が響く。
声のするほうを見ると、駆け足でこちらに向かってくる緩奈と藤崎。
後から同じ部署の人達が数人近づいてくる。
「課長は?」
「まだ…治療室。」
「そっか。…楓、大丈夫?」
「…うん。私は大丈夫。」
「嘘つけ。腕と膝見てみろよ。」
藤崎が小さなため息と一緒に呟く。
ハッとして自分の体を見てみると階段から落ちたときの擦り傷やアザが血をにじませていた。
今になって痛みが全身を走る。
「後で治療してこいよ。」
「うん。…何かごめん。動揺してて…」
「謝るなって。今は待つしかないだろ?」
小さく頷く。
藤崎は他の同僚のところへ行き、緩奈は私の隣に座った。
なんとなく沈黙が続く。
「あのさ、楓……楓の彼氏、柳瀬課長だったんだね。」
周りに気を使ってか、声のトーンが落ち着いている。
先輩の意識が戻らなかったとき、私が取り乱して先輩の名前を呼んでしまっていたことに気が付いた。
勘の良い緩奈ならすぐに分かってしまうだろう。
「ぜーんぜん気づかなかった。何で教えてくれなかったの?」
「…ごめん。何か、言えなくて…」
「いいよ。ずーっと自分は不釣合いだって言ってたの、なんとなくわかる気がする。」
「…うん。」
「でも、もう1つ言いたいことがあります。」
「ん?」
「楓は課長と不釣合いなんかじゃない。」
