もともと泣きつかれていた体と緊張がほどけた心のせいで瞼が重くなる。
悔しがる彼を横目に深い眠りについてしまっていた。
目覚めると、私の体にはしっかり毛布がかけてあった。
藤崎がかけてくれたんだ。
「…起きろ。」
「……起きてるよ…。」
「嘘つけ。」
不愛想な話しかけ方。
私の方が起きるのが遅いなんて。
先輩だったら絶対ありえない。
ゆっくりと上体を起こして声のするほうを見る。
すでにワイシャツを着てネクタイもゆるくとめている藤崎がコーヒーを飲んでいる。
「目、また腫れてるぞ」
「うるさい俺様…」
「支度しろよ…会社行くぞ」
ムッとしながらも支度を始める。
昨日のことが何も無かったように
記憶はしっかりある、感触も少しだけ覚えてる。
でも、分かってしまった。
本当に触れてほしい人は違う人だ。
ワイシャツのまま寝てしまったためしわがすごい。
今日は一日ジャケットを着たままだなぁ…
途中でワイシャツ買えるとこあるかな…
「なぁ。」
「ん?」
コーヒーを飲み終えたのかソファから腰を上げた。
きっちりとネクタイを締め、ジャケットを着て髪の毛をセットした藤崎が私に声をかける。
「彼氏…もしどうでも良くなったら俺のとこ来い。」
「……。」
「待ってる…絶対お前のこと泣かせない」
いつもだったらちょっと赤くなって言うのに、こういうときだけ本当に男らしい。
「……うん。そうしようっかな…」
弱弱しく笑う私を見た藤崎が、私の知らないところで顔を赤らめていたのは気づかなかった。
この後私たちは、一緒に通勤してしまったことで部署の皆にいじられるはめになった。
きっと部長の耳にも入っただろう。
