私はこのまま藤崎と一夜を過ごすのだろうか…
タクシーで帰るとしてお金は………
千円と少しだけ入った小銭に頭を抱えた。
この額だと初乗り料金であっという間に消えてしまう。
到底自分の家には帰れない。
「何で入ってないかなぁ……」
ポツンと呟く。
遠くで藤崎がシャワーを浴びている音がする。
下心あるって言う割には行動が大胆過ぎる。
ずるい、私ばっかり意識してるみたいだ。
邪念を吹き飛ばすように、ごろんとベッドに寝転ぶ。
こんな展開になってしまったが、少しの間でも先輩のことを忘れさせてくれた藤崎にちょっとだけ感謝している。
この状況は予想外だったけど。
あまり見ないようにしていた携帯の画面には誰からの連絡も無かった。
同時に寂しさが私を襲う。
こんなに彼のことを気にしているのは私だけなのだろうか。
先輩は、私のことなんかもう忘れたいと思ってるのかな…
深いため息をついて自分の顔を隠すように手で覆う。
すぐに視界が暗くなる。
「泣いてんの。」
暗かった視界がパッと開けた。
目の前には思い出していた人とは違う、藤崎が立っていた。
少しだけ心配そうな表情をしている。
「泣いてない。……髪の毛、濡れてるよ。」
「彼氏のことでも思い出してんのかと思った。…あ、元彼氏か」
「え……」
寝転んでいた体をすくっと起こした。
…先輩はもうそう思っているのかもしれない。
もう、切り替えて違う人と…
一時期、考えては打ち消してを繰り返していた考えたくもない事。
引き止める権利は、私には無いのかも
