課長と私


路地に入ると一気に静かになる。
出来上がっている人もちらほら。

そんな人達を横目で見ながらお店に入る。
先程のお店とは違い、すこしだけ落ち着いた雰囲気。


「今日は本当に飲まねえの?」


生ビールを半分まで一気に飲む藤崎が私に聞いてくる。
ここでも私はノンアルコール一択だ。


「この間のことを覚えているだろうか…」

「…あれ、気にしてんの?」


まるで自分は気にしてない風。
ちょっとムッとした。


「ええ。…彼氏、怒りましたし。」

「へぇー…で、その彼氏と今うまく行ってない訳だ」


何でそこまで突っ込んでくるかな…
ただでさえ精神的に安定してないっていうのに…

本日何杯目かのウーロン茶でゴクンとのどを鳴らした。


「うまく……いってないのかな…」

「俺に聞くなよ。」

「いや…何か、私が勝手に自爆した…みたいな。でも、私が言ったこと、自分が言われたら同じ反応するかも…って」

「…それで…お前はどうしたいの。」

「え?」


お酒のせいか、藤崎の頬がほんのり赤い。
ちょっとだけ色っぽい。


「戻りたいの、そいつと。」

「……たぶん。」


私の答えを聞くなり、大きなため息をつく。


「…結果出すの早すぎだろ…」

「えっ…結構考えたりしたんだけど…」

「違う。……もっと、チャンスくれよな…やっと来たと思ったのに」


少しかすれた声で話す藤崎にドキッとしつつも平然を装う。
大人の男性とは、こんなに色気があるものだろうか。

今のコイツなら周りの女子が放っておかない気もする。


「あの…チャンスというのは……」


なんとなく予想はついていたが、迂闊だったかもしれない。


「言わせんなよ……今日、朝から様子がおかしいと思って見てたら…お前らが話してるのたまたま聞こえて、彼氏とうまくいってないっていうの知って……今ならお前の支えになれるかもって……聞こえは良いかもしれないけど、もしかしたら振り向いてくれるかもって…完全に下心。」


両手で持っていたウーロン茶を落としてしまうかと思った。

プレゼンが終わって2人きりになった時を思い出した。
不覚にも藤崎にときめいてしまった瞬間。

今も、同じ気持ちが微かにある。