「んー…楓ちゃんが早めに帰って来ないとお腹すくんだよね。」
「何ですかそれ…先輩にとって私ってごはん作る人なんですか。家政婦さんですか。」
そこでサラッと「心配だから」って言ってくれたらいいのに。
「違うけど…。」
「違うけど…何ですか?」
「二人で一緒にいる時間も減るじゃん…。」
前言撤回。
ドストレートに一緒にいたいというわけではないけど、そこが先輩らしい。
かなり遠まわしに「寂しい」と伝えてきてくれている気がする。
そう受け取ることにします。
「ほら、ついたよ。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
彼の家はエレベーターのついているマンションに住んでいる。
地下はマンションに住んでいる人専用の駐車場だ。
高級車もちらほら見える。
先輩の家の鍵は結構前からもらってはいるけど未だに1回も使ったことがない。
使いたくないわけじゃなくて、お守りのように持っているだけで幸せなのだ。
「先輩…何もないじゃないですか…」
彼の部屋につき、冷蔵庫を開けて一言。
本当にこの人はどうやって生活してきたのだろう。
「ん~…チャーハンにしよ…」
唯一あった卵でなんとかそれっぽく料理をする。
昔チラッと聞いたことがあるのは、大学時代の先輩はご飯を食べなさ過ぎて1度病院に運ばれたことがあるとかないとか。
それがあってからなのか、先輩の友達から始め、後輩たちも気を使ってご飯を提供してくれているっていうのも都市伝説並に有名だった。
「出来た…?」
「わっ!!先輩…驚かせないでください。あと服着てください。」
後ろから抱きつくのが先輩は落ち着くらしく、よくこの体制になる。
あと、いつの間にシャワー浴びてきたんだろうこの人。
背中が暖かい。
