海妃ちゃんは、毎年文化祭で花嫁コンテストに参加を頼まれるほどの美人さん。
細くてスタイルもよくて、最初に声をかけられたときはどこかのモデルさんでもやってるのかと思ったほど。
そんな海妃ちゃんの彼氏、楓大くんはこれまた美形で。
茶髪で制服を少し着崩してるけど、それがまたおしゃれ。
そしてもちろん、楓大くんも海妃ちゃんの花婿役として毎年文化祭参加を果たしている。
とっても仲良しカップルなの。
私は、そんな二人と新しい教室に向かいながら口を尖らせた。
「でも残念だね、最後の高校生活で離れちゃうなんて…」
むーっと眉間にシワをよせると、楓大くんは苦笑い。
「まあな。でも俺は雪野が一人になっちゃう方を心配してたけど」
………?
なんで?
私、そんなにコミュニケーション能力は低くない気がするけど……
それにもう3年生だし、クラスの中で誰一人知らないなんて事態は無いと思う。
頭に?マークを浮かべていると、海妃ちゃんがはぁ~…っと盛大なため息をついた。
「これだから心配だって言ってるの。春は!」
ひときわ大きな声で言われ、体がゆれる。
…お、おこられた…
そんなに心配されるようなこと、した覚えはないんだけどなぁ。
特別ぼーっとしてるわけでもないのに。
「まあまあ。じゃ、俺コッチだからまた後でな」
首をかしげる私と前を歩く海妃ちゃんに、楓大くんが手をあげた。
そっか……結構離れてるんだなあ、教室。
名残惜しいけど手を振ると、楓大くんはニコッと笑って背を向ける。
「あたし達も行こ、春!!」
「うん」
そして私も海妃ちゃんと二人で自分たちの教室へと足を進めた。