あなたに

「ほい、これ山尾のパンなー。」






「これは橘さんの。これでよかった?」









「あ、うん!苺大好きなの!ありがとう。」








「里依紗が私以外にそんな笑顔向けるの珍しい。」







「ちょっと、麻花。」








私は千葉くんとなら自然と話せて、
むしろたくさん話をしたくなる。







「そんときにさ〜、」








「…なぁ、お前らは二人で話さねーの?」








ふいに長谷川くんに聞かれた。
さっきから麻花の話ばかりを聞いていたからだ。







「…そんなこと言っても…、」









「じゃあ、向こうで話そう、橘さん。」







そう言って千葉くんは私の手を取って、二人からは死角になる場所に行った。







「…ごめんね。急にこんなことして。」






「…ううん!気を使ってくれたんだよね…?」







「…橘さん、二人嫌だったでしょ?」






「嫌じゃないよ…!ただ、緊張しちゃうから…。」







そう言うと、千葉くんは驚いたような顔をした。






「…俺も同じ。だけど、四人でって言われたから嫌われてるのかと…」








「千葉くんは、嫌われるようなことしてないよ。」







そう言ってパンを一口頬張る。






「…橘さんって不思議な子だよね。」







「え?どうして?」






「…俺なんかに近寄る人なんて、橘さんと山尾の長谷川くらいだよ。」






そう言って千葉くんは目を伏せた。