あったあった。
坂道を下り終わってから3分ほど歩いたところでカフェを見つけた。
さっき座って休んでいた時の倍以上の汗によってワンピースの下に着ている真っ白なキャミソールが肌に張り付いている。
ここでブラックコーヒーを飲みながら涼む。
その選択肢しか私の脳裏には浮かばなかった。
カランカランと入口のドアの上にぶら下がっている鈴を鳴らしながら中に入る。
それと同時に店内から「いらっしゃいませー!」
という複数人の声が聞こえた。
私は一番奥まで歩き、窓側の席に腰を下ろした。
若い黒髪の女の子の店員を呼び、冷たいブラックコーヒーを注文する。
女の子が去ると、ふと外に目をやった。
聞こえるのはセミの鳴き声。
緑はかすかに揺れているが、風の音は一切聞こえなかった。
時々通り過ぎる自転車に乗った人達も、一見涼しそうに見えるが、額を流れる汗を隠すことはできていなかった。
「ブラックコーヒーです」
先程の女の子がコトンといい音を鳴らしながら机にグラスを置いた。
すぐそのグラスを手に取り一口、二口、口に含む。
最後に飲み物を口にした2時間前より何倍も美味しく感じた。
冷房の効いた室内で冷たいコーヒーを飲んでいる。
この瞬間は今日一番の幸せだと思えた。

