スプーンの柄の部分をしかりつけるようにぎゅっとにぎると
はちみつはぽたっ、ぽたっ、と次第に出なくなり

やんわり柄の部分をいいこいいこすると、
どろどろだらしなく溢れだしてくる。


いつまでもスプーンをぎゅっと握っていられるわけもなく
このまま垂らしておくわけにはいかず

さてこまったなあ…と途方に暮れて
水を入れたコップにスプーンをつけてみる。

すると、はちみつのようなものは、ぴたりと止まった。

ウーロン茶もコーラも試したが
やっぱり出てこない。

またプレーンヨーグルトをほじくってみると
やっぱりだらだら出てくる。

アロエヨーグルトは出ない。
低糖ヨーグルトはすこし出る。
のむヨーグルトは出ない。
プレーンヨーグルトは出る。

スプーンにも好みがあるのか。

このスプーンは、ヨーグルトに恋をしているのかもしれない。

とおもった。

もしかしたら私に気をつかって
酸味を和らげてくれているのかもしれない。

どちらでも、今後温かく見守ろう、
気をつかえるスプーンなんてすてきだし。

恋をしているスプーンなんておもしろいし。

なんて考えながら
スキップしながら駅へ向かった。