速水君はあの優しい笑顔で


彼女に駆け寄ると


ポンポンと頭を撫でてイチゴ飴を渡していた



それに嬉しそうに微笑み返す彼女。




彼女...いたんだ。



それにとっても可愛い子



傍から見れば2人は俗に言う"美男美女"で


とてもお似合いだった



...胸が苦しい


2人を見ていると苦しいよ


耐え切れなくなりスッと土手から降りて


歩き出そうとしたとき


「カンナ?」


同時に戻ってきた拓真に腕を掴まれて


あたしはふと我に返った



そうだ....あたし、


拓真と来てたんだもん


なんで勝手に帰ろうとしたの...バカ



「あ、イチゴ飴ありがとう」



「おう...どうした?」


「...ううん、なんでもない。いこっ花火始まっちゃう」


「...そうだな」




お似合いな速水君たちを避けるようにあたしは


下を向いてバレないように


急ぎ足で2人の横を通り過ぎた



間近で見るのなんて耐えられないし


そもそもあたしだってバレたくない



そして屋台のすぐ傍にある河川敷までくると


まだ人がまばらで


あたしたちは空いていたベンチに座った




「拓真は何にも食べないの?」

「あぁ、俺はいいや」

「ふぅん」


空を見上げると

都会とは違う夜空がそこにあって


屋台の明かりがあるはずなのに


ちらほらと綺麗な星が見える





「あと2分くらいで始まるって」


あたしはイチゴ飴を舐めながら


腕時計を確認して隣に座る拓真をみると



拓真はあたしをじっと見つめていた


「どうかしたの?」

「あの..さ、カンナ」

「ん?」

「俺....」




拓真が口を開いたとき



ヒュルルルル...


ッバーン!!!!


大きな花火が夜空で鳴った




けどあたしは消えかかったその言葉を


聞き逃さなかった



「カンナが好きだ」