「カンナなんか食べる?」


波のように押し寄せる人ごみ

あたしの手を握ったまま前を歩く拓真が

チラッと振り返った



「イチゴ飴...」


「わかった、その土手で待ってろ」

「ありがとう」


拓真は人ごみからはずれた土手に


あたしを座らせると


あっという間に人の波に飲み込まれた行った




なんとなく人ごみを見つめる


やっぱり浴衣着ている子が多いな

着てきて正解だったかも



けど、こんなところをもし見られたら


あたし拓真と付き合ってるって完璧勘違いされるよね



ふと下駄から視線をあげたとき




周りとは一風違うオーラを放つ浴衣姿を見つけた


レーザービームが出ているんじゃないかってくらい


その子だけが光って見えて


あたしは紺色の浴衣にかぶさるその艶やかなロングヘアーを


じっと見つめた



するとくるっと振りかえった彼女は


あたしが今まで出会った女の子の誰よりも


可愛くて....綺麗な子


こんな子いるんだってくらいパーツが全て完璧で


一際目立っている



仕草も女の子らしくて可愛い...


そんな彼女が白くて細い腕を小さく振る


その先をなんとなく目で追う....



えっ...


そこには紛れもなく


速水君がいた。