そう宣言した通り、颯さんは空を見上げたまま言った。


「確かにここは辛いさ。いつ自分が、仲間が死んでもおかしくねぇ場所だ」


「……嫌になったり、しないんですか」


「独り言だっつったろ」


思わず口を挟んだら、颯さんは苦笑して、元通り座って、真っ直ぐあたしの目を見た。


「俺にはここしかないからな。どんなに理不尽でも辛くても、俺はここであの人を守る」


「あの人って……、隊長の、ことですか」


「あぁ。隊長がいなかったら、俺は今ここにいない。あの人は一人でも十分強いし、俺が守るなんて何様だよって感じだけど、そばにいたいんだ」


「……」


「どこにいるのか、生きてるのかも分からない親を生かすためじゃない、俺は俺の、魁部隊のためにここにいる」


颯さんはそう言いきると、あたしから目をそらした。


「……守るなんて、そんなこと言うつもりはねぇ。だが、もしお前が入隊したら稽古をつけるのは俺だ。だから、死ぬなんてことにならねぇように、強くしてやる」


それだけ言って、颯さんはそそくさと立ち去ってしまった。




「強く……」


残されたあたしは、ぽつりと、颯さんが言った言葉を繰り返していた。