「そろそろご飯じゃないの?僕のところには明里さんが運んできてくれるから、君はもう行きなよ。おかず、光に取られちゃうよ」


「あはは。大丈夫ですよー。恭介さんがついていると思いますしね」


別れるときは笑顔で。


こちらは、もういつ会えなくなってもおかしくない状況であることは知ってる。


「ねえ、薫ちゃん」


「はい?」


襖を開けて、出ていきかけたあたしに、直紀さんが首だけこちらに向けて声をかけた。


「どうかしました?」


「僕は……」


言いかけて、直紀さんはぴたりと口を閉じた。


「いや、いいや。何でもない。僕はまた寝るよ」


「?……そうですか?」


直紀さんは、既にその瞳を閉じていて、本当に寝ているわけではないんだろうけど、聞き返すことを拒否している。


「それじゃあ、失礼します……」


あたしは、そっと襖を閉めてその場を立ち去ることしか出来なかった。