あたしは、ゆっくりと腰を下ろし、空を見上げた。


……月は、出ていない。


それならば、颯さんは何を見ていたのだろう。


「空を見るとさ、」


唐突に、颯さんが喋り始めた。


「なんか、落ち着くんだよ。晴れ渡ってても、曇ってても、真っ黒でも。身体から離れた魂みたいなやつが、全部空にあんのかなって、思うから」


……海さんの、こと……?


「海だけじゃねぇ……、他にも、いるさ。俺の両親は、生死すら不明だけど、繋がった空の向こうのどこかにいんのかなとか」


「……」