あたしたちがこれから行こうとしているのは、国の中心部、王都の端にある、魁部隊の屯所。


魁部隊というのは、どこかと戦いになった時に、真っ先に敵陣に突っ込んで―――、つまり、最前線で戦う部隊のこと。


詳しいことはあまり公表されてないけれど、魁部隊に入隊するとたくさん報奨金が家族に支払われるから、お金に困っている貧乏な家がよく自分の子供を実質売りに出していると聞いた。


あたしたちが暮らしている―――いや、暮らしていた村では子供を売った家は今までなかったけど、おとといの夜琥太郎が、両親が魁部隊がどうのと話しているのを聞いてしまったらしい。



『あー、薫。俺、魁部隊に売られるかも』



そう言ってきたのが、昨日の昼間。



『魁部隊? なんで?』


『なんでってそりゃあ……金がないからじゃね? 俺さ、無理矢理引っ張られていくのなんか嫌なんだよな。だから、自分から出て行こうと思ってさ』


『出て行くって……この村から? 王都に行くの? 一人で?』


『一人で行かないでどうするんだよ』


琥太郎はそう言って笑ったけど、その笑顔の裏に寂しさがにじみ出ていたのにあたしはちゃんと気が付いた。


だてに何年も幼馴染やってない。