身体が、がたがたと震え出す。


母さんが……?


母さんが、死んだ……?


はっと気づいたときには、兄さんは既に塀の上に立っていて、高らかに笑っていた。


「あはははは!そういやそいつ、人獣に噛まれちゃったんだねぇ!!かーわいそうに!死ぬか獣になるか、気になるからまた来るよ!」


そう言うと、兄さんは地面に飛び降り、姿を消した。


「待て!!」


呆然として皆が眺めるなか、颯さんが素早く動いて塀を飛び越える。


しかし、その姿は既に見えない。



「律!!」


「情報部隊総力を上げて追いかけます!」


颯さんが律くんの名前を呼んだときには既に律くんの姿はなく、声だけが辺りに響いていた。