「薫ちゃんの、知り合い……?」


重苦しい空気の中、辛うじて奏多さんが口を開く。


その声は、敵か味方か、兄さんを見極めようとしているようだった。


「あはは。俺は、薫の兄ですよ。知り合いどころか、家族です、家族」


兄さんは、あたしがよく知る笑顔でにっと笑うと、堂々と屯所の敷地内に入ってきた。


「待て。こいつらを連れてきたのは、お前か?」


先に冷静さを取り戻した颯さんが、再び刀を構え直して、兄さんに向ける。


兄さんは、そんな颯さんを無視して悠々と歩いてくると、あたしの方まで向かってきた。


刀を向けているにも関わらず、何の関心も示しないのに驚いたのか、颯さんも動けなくなっている。