「直紀がちょうど塀のそばに立ってて……。破られたとき、飛び込んできた狼にその勢いのまま……!」


光くんがぽろぽろと涙をこぼしながら状況を説明した。


直紀さんを抱き抱えていた光くんも、琥太郎も、直紀さんの血があちこちに付着している。


「報告します!たった今情報部隊の二人が戻ってきて、今現在、屯所周りに敵の姿はないようです!」


周りに転がっているこの敵の死体は恭介さんと、そして今知らせてくれた律くんとで殺ったのだろう。


律くんも息を乱し、返り血がついている。


「とにかく直紀を中に運ぶぞ!消毒しないと……!」


「あーあ。ぐっちゃぐちゃだねぇ」


颯さんが半分意識を失いかけている直紀さんを抱えあげたとき、開いた穴の向こうから、人が姿を現した。