「おーい、薫ー!!」


ひそめた声で、あたしを呼ぶ声がする。


あたしは男物の着物に刀を差すと、こっそりと家から飛び出した。


「琥太郎、お待たせ」


「おう。ほんとにいいのか?」


すっかり準備を整えたあたしを見て、琥太郎が少しだけ眉を下げる。


「別にわざわざ、俺についてくることないのに……」


「何言ってんのよ、あたしが行くって決めたの! まあ、家族には何も言わずに出て行くわけだけど……」


ちょっとだけ振り返って家をじっと眺めてから、さっさと歩き出すと、後ろから琥太郎も慌ててついてくるのが気配で分かった。



「琥太郎こそ、もう少し粘ってなくて良かったの? こそっと話してるの聞いただけなんでしょ?」


「お、俺はいいんだよ! 粘ってたってなんだって連れて行かれるんだし、だったら自分から行った方がいいっていうか……。俺よりおまえだろ! 自分から行くなんて!」