「..............」


その場に沈黙が流れて、ますます焦る。

「あ、あの」

「早く行こ」

えっ。

夏目くんはさっさと歩き始める。

私は慌ててあとをついていった。



たどり着いたのは、三階の自習室だった。

夏目くんが鍵を使って、扉を開ける。

入り口に立ってすぐに見えたのは、奥にひとつだけある窓だった。

室内は、教室の四分の一くらいの広さしかない。

真ん中に長机がひとつと、左右に四つずつ、パイプ椅子が置かれていた。


「........」

少し狭いけど、彼とふたりで集中して勉強するには、ちょうどいい場所かもしれない。

感心しながら室内を見渡していると、何故かパイプ椅子を窓際の壁に寄せて座った夏目くんが、「座れば?」と声をかけてきた。

「.....あ、うん」

返事をして、私も窓にいちばん近い椅子を選ぶ。