笑顔、こもれび。



「西森」


俯いた私に、彼が声をかける。

顔を上げると、少しだけわらって、開いた文庫本を見つめる夏目くんがいた。


「....ありがと」


その言葉を聞いた瞬間、私はきつく目を閉じた。

....ずるいな、このひと。

不器用で、無愛想で。

見ているこっちが腹立つくらい、純粋。

もっと、正直になればいいのに。

彼氏から奪うくらい、朝木さんを揺さぶればいいのに。

....こんなにも静かな恋を、私は見たことがなかった。






次の金曜日も、私達は変わらず自習室で過ごした。

夏目くんははじめの頃より、少しだけ口数が増えた気がする。


彼はきっと疑問に思ったはずなのに、私が『いつから』『どうして』すきなひとがわかったのか、一度も尋ねてこなかった。

それどころか、私に対して、彼はどこか安心したような顔をする。