朝木さんがヒロインで、彼氏さんがヒーローで。夏目くんは朝木さんが好きで。
こうやって、彼の密かな恋心を見ているだけの私は、この物語の登場人物にすらなっていないから。
私には、物語の展開は左右できないのだ。
わかってる、わかってる、けど。
黙り込んだ私を見て、夏目くんはハハ、と小さくわらった。
私のすきな、わらいかたで。
喉の奥で、慈しむように、わらった。
「なんで西森が、そんな顔すんだよ」
「.....」
「いーんだよ。これで」
だって。
夏目くんが、ちっとも悲しい顔をしないから。
涙が出そうになって、必死に堪えた。
...夏目くんが、泣かないのに。
私が、泣けるはずない。
泣いていい、はずがない。



