夏目くんはしばらくの間、驚いたように私を見ていた。
私も同じように見つめ返した。
彼が、すきなひとを見つめるときのように、まっすぐ。
窓から風が、私達の間を通り抜ける。
夏目くんの表情が変わったのは、そのときだった。
「いわないよ」
....とても落ち着いた、声色で。
彼は目を伏せて、静かに言う。
瞳をあんなにも色づかせて想い続ける相手に、告げない、と言う。
でもそれじゃ、きみは。
「.....」
納得のいかない顔をする私に、夏目くんは何処か諦めたような顔をして、続けた。
「あっちも、転校とかで彼氏と大変だろ」
「...後悔、しない?」
「最後に困らせる方が、後悔する」
お人好し。
そんな風に格好つけてどうするんだ。
悔しかった。やさしすぎると思った。
いえばいいのに。
そう思うけど、私の口はそれ以上動かない。
私が言えることではない。



