少年は 何処で どう一夜を過ごしたのか。

この安全とは程遠い
不安全なこの荒れた大地で ワザワザ死と隣り合わせのような事をして 一夜を過ごしたのか。

なぜセレーネの言葉に甘えなかったのか。

いささか腑に落ちない。
いや これこそが 少年らしいのかもしれない。

だがこれも憶測にしか過ぎない。
それは 少年がどう過ごしたか。と言う問題に対して 絶対的な答えを応えられないからである。

これは少年にしか分からないことで 答えはきっと 自然と分かってくるはず。
と言う答えが今の所 正しい応え《こたえ》なのかもしれない。


日が浅く 冷え込むタナトス

少年は風を最小限受けないために 体を縮込ませながらあるいた。

ザッザッザと歩くたびに 砂煙が舞い。
時折 舞ってきた砂煙と同化し 少年を包み込む。

それでも足を止めず 少年は何かに駆られるかのように ひたすらに歩んだ。

薄暗い 何処からか声が聞こえる。

さえぎるものがない 地は声がよく届く。

目を凝らせば そこには
小さい。 まだ4歳から5歳だろうか。
それぐらいの少女が
もう この下には居ないだろうと思わざるおえない小さい少女が
父親と何かを植えていた。

生き生きとした2人。
この絶対的な絶望しか残らない この地で
愛という絆で頑張れている2人。
その笑顔は 何にも負けないほど輝いて見えた。

少女と父親は 当然かのように 当たり前かのように 少年に気がつかず去っていった。
きっとこの近くに住んでいる場所があるのだろう。

近づいて 見てみるとそこには
今にも枯れ果てそうなリンゴの苗木が植えられていた。
小さな小さな希望を乗せて。

それを見た少年は そっと涙を流した。