少年は 直射日光を浴びながら
荒地を歩いた。
季節と呼べるものはなく
突如として寒波に包まれたりする。
言わば異常気象のようなもの。

木陰など響きがいいものは辺りを見渡しても見当たらない程に枯渇していた。

少年の黒髪は砂埃で所々白黒く染まり

布で塞いだ 鼻と口の隙間は汗と砂で汚れていた。

しばらく歩いていると 明らかに 少年に気がつき
倒れこむ老人がいた。

少年はそれに気がつかないふりをし
怪しまないふりをし 老人に近ずいた。

《どうなされました?》
少年は紳士に老人と向き合い 話を掛けた。

《すまない。 足をくじいてしまい
家で待つ孫等の為に食料を調達するつもりが出来なくなってしまった。 このままでは 年幾ばくもない孫が腹を空かせて死んでしまう。行き行く人に話しても聞く耳すら立ててもらえず終いなんだ。。》

老人は同情せざるおえない程
悲劇的で感情的にならざるおえない言葉を並べた。
少年は 疑いもせず
いやわざと疑うこともせず
老人の言葉を聞き入れた。

《大変ですね。僕はあなたの言葉を信じますよ。 人は信じる気持ちを忘れたら人でなくなってしまう。 だから僕は貴方を信じます。その結果が違う方向だとしても。》

少年はそう言うと 自ら用意した
何日間分の固いパンと少し濁った水を老人に渡した。

老人は軽くニヤつくと ボロが出てしまったことに気がつくと 少年の顔を静かに覗きこんだ。

少年はその行動に気がつかなかった
いや気がつかないふりをしていたのか。
それにホッとした老人は 隠すかのように
口を開いた

《すまないね。助かるよ。君の名前はなんて言うのかな? 帰ったら孫たちに伝えなきゃいけないから 良かったら教えてくれないかな?》

少年は別段嫌そうにもせず《テロス》と名乗ると

先を急がなければ行けないといい
最後に老人に神のご加護を と言い残し その場を後した。

すると老人は笑いながら《神のご加護ね。
今やそのよーなものは居ないさ。テロス君も面白いことを言う。》と本音をあらわに晒した。

其れを聞き流し 少年は歩き出した。

日が暮れる頃
少年が小さな村にたどり着いた時

タナトスからは老人の声によく似た断末魔が響き渡った。