強引な彼との社内恋愛事情


「ねぇ。千花さん」


「なに?」


彼の手が私の手をとって次は甲にキスをする。


「千花さん下さい」


「なにを?」


「千花さんの全部。忘れられないことも忘れられないまま受け止めますから」


「受け止めるって……」


「年下嫌いで、田原さんが好きでもいいです。いつか変えるから」


真っ直ぐな気持ちが私をくすぐらせたのか、笑いが零れてしまった。


「千花さん。またそうやってごまかすんですか?」


「……違うよ」


「違う?」


「田原さんのことで哀しい顔してたんじゃないんだと思う」


「え?」


「それはきっと、広重のせいだよ」


私だって、そんな顔してるなんて気づかなかった。
本当に。広重はいつだって私をよく見てる。