「で、なに?」
顔をあげずに、キーボードを叩く指も止めなかった。
だけど、その腕が引っ張られた。
「なんなんですか。本当に。俺、千花さんに相当頭きてますよ」
「広重?」
「千花さんが俺に興味ないような態度とり続けても諦めきれなくて。
ようやく念願叶ってニ人で遊べて……。
しかも俺の家にも泊まってくれたじゃないですか。
俺、すげー嬉しかったんですよ?
なのに、千花さんから誘ってきたくせに翌日になって、なにもなかった顔してご飯も行かないとか言ってきて。
なんなんですか?」
「……それは」
「俺が意識して千花さんのことシカトしても涼しい顔してるのもムカつきます。
なのに、田原さんがいないだけでそんな哀しそうな顔で仕事してるし。
イライラします。千花さん見てると」
「痛いってば」
「いい加減に、俺のこと見てよ」
哀しい声と腕が私を包み込んだ。



