ピッとドアロックの解除音が鳴った。 誰だろうと思って見ると、ドアを開けたのは広重だった。 ドキッとした。 彼のことを考えてるときに来るなんて。 「お疲れ」とだけ声をかけて、パソコンに向かう。 ここのフロアに来るのは珍しい。 誰かに用事でもあったのか、だけどみんな帰ってしまったし。 そんなのって、フロアを見ればわかるだろうし。 なんの用だろう? そう思ってもなにも訊いてはいけない気がした。 カタカタとキーボードを打つ音だけが響く。 「千花さん」