「えっと……」
どう考えても広重の家で手料理を振る舞うつもりとしか思えない。
それって。どう考えてみても。
存在としては彼女だと思った。
友達がこんな大きな袋を抱えて家にやってくるわけがないんだ。
「一幸になんか用ですか?」
「一幸って?」
「広重一幸ですよ?」
「ああ。えっと。なんで広重の名前が出てくるんですか?」
「だって。ここ、一幸の家」
「えっ?そうなんですか?知らなかったです」
咄嗟に嘘をついたけど、信じて貰えるわけがないかもしれない。
「ここの近くに友達の家があって、迷ってたんですよ。すみません。では」
と頭を下げて足早に逃げた。



