「あっ。田原さんここに居たんですか?」
喫煙所のドアが開くと、広重が叫んだ。
「なに?俺のこと探してたわけ?」
「そうっすよ。今日、呑みに行きません?」
「呑み?」
「総務の金子さんとかも来るんですけど。どうですか?」
「んー」と迷いながら、私を見た。
「遠山も行くなら行くけど」
「へっ?」
「じゃあ、千花さんも行きましょう」
「いやでも……」
「遅くまで呑みませんよ。軽く一杯」なんて笑う。
「遠山、大丈夫だよ」
田原さんまでそう言って笑うから、断り辛くて頷いてしまった。
ていうか。
私、田原さんに「好き」って言いそうになってしまった。
そんなこと言ったら気まずくなって終わるだけだというのに。



