視界に入れないようにしようと思うのが無理あって、
誰もいないフロアに人が入って来て気づかない振りなんて苦しい。
「千花さん、お疲れ様です」
と、広重が笑顔で近寄ってくる。
「お疲れ」
「再現できました?」
「全然ダメだね。でる気配もない」
「ていうか、みんな帰しちゃったんですか?」
「うん。遅くなりそうだったし、あとひとりでやっても終わらせられそうだったから」
「千花さんもっと周りに頼ってもいいんじゃないですか?鈴元さん、ネトゲしかやることないとかぼやいてたし。時間ありますよ、あの人きっと」
気負わずに、と笑いながら手に持っていた缶コーヒーをテーブルに置いて、どうぞと言った。
「自分のあるから」
「じゃあ家で飲んで下さい」
冷たく言ったのに、朗々と返す。
「俺もやりますよ」
と、相馬さんがさっきまで頑張っていたスマートフォンを手に取り、カメラを起動させる。



