結局、広重の見つけた不具合が再現できなくて、フロアに戻ってから相馬さんと二人で再現させようと躍起になっていた。
設計に不具合報告をする際、最短の手順や発生する確率も報告しなければならないから、こうも再現されないと、なかなか事が進まない。
相馬さんも集中力が切れ、隣の席の子に、「再現できなーい」とぼやいたり、息抜きにフロアを出る回数が増えている。
時間も遅くなるから、きりのいい時間に帰るように声をかけた。
定時をだいぶ過ぎた頃には、フロアにはひとりだった。
まさか外で撮影という条件も必要だったり?
でもなー。
「うーん」と、独り言が出る。
最悪発生したのは一回ってことで、設計に報告するしかないか。
どっちにしろもう少しテスト回数を増やさないと、あと500回やってみて下さいなんて返信がくるに決まっているから、言われないような回数をやらなければいけない。
と、あくびを噛みしめていると、ピッとドアロックの解除音がした。



