「広重はチャラいって噂しか聞こえないもんね。あだ名がつくなら絶対下ネタだよ」
「こんなに一途なのに。噂なんか嘘ばっか」
「私はまだ疑ってるけど」
「えっ?千花さんまで?こんなに純情なのに?」
「なんかね。説得力ないんだよね」
「千花さんまでそんなこと言うのかぁ。俺、彼氏なのに」
ふふっと、笑い返す。
「でも、千花さん」
「ん?」
「頑張りすぎないで下さいね。俺、いつでもいますから。……うん。ずっといます。それだけは約束します」
電気が消えた会社の前を通った。青々とした桜並木。
花がなくなると、なんの木だったか忘れてしまいそうだ。
だけど、それでも。
また春の日には気づかれるのだろう。



