「どこに行こうとしてんだよ」
萌絵が一瞬、ぴくりと身じろぎをしたのが服越しに伝わってくる。
幽霊化してきてるため、はっきりとは感じ取れないが、それでも微かには感じとれるんだ。
「どこ、なんて……ないわよ、そんなもの」
俺の背中に手を回すことなく、彼女はそう答えた。
「それじゃあ、ずっと俺んちにいろよ」
ああ……なんで俺はいつもこんな言い方しかできないんだろうか。
『離れたくない』って、たったひとこと言えばいいだけじゃないか。
「――それは無理」
萌絵は静かに呟いた。
無理?
なんで無理なんだよ。
「なんでだよ……」


