「なぁ、萌絵」
ゆっくりと口を開いて、やっとのことで声を絞り出すと、掠れた声が出た。
「さっきは悪かった」
しっかりと彼女を見つめたまま謝るが、
彼女は空を仰いだままで、俺の方を見ようとはしない。
「なんで謝るの?悪いのは私なのに」
「結局は、冷静になれなかった俺が悪いんだ。だから……すまなかった」
萌絵は屋根からひらりと軽やかに飛び降りると、俺と向き合った。
「じゃあ、おあいこかな?」
「お、おう」
どこか他人行儀な話し方に戸惑いながらも
いつもどおりに話してくれたことが嬉しくて、顔を綻ばせる。
が、それはほんの一瞬だった。
「萌絵、お前……」
背景となるはずの木々や月、建物…全てが彼女の体を通して見えている。
それはつまり、元に戻ることを示していて――……


