「私、疲れたから先に帰るね。
みんなはゆっくり楽しんできて」
萌絵はそこに置いていたパーカーを羽織り、くるりと踵を返すと、俺達に背を向けて歩き出す。
彼女が1歩、また1歩と足を踏み出すたびに水に濡れた漆黒の髪の毛が小さく揺れた。
「真琴くん……」
「来栖、萌絵ちゃん引き止めないのか?」
小さくなった背中を見つめながら、俺は拳をきつく握り締める。
「真琴くん大丈夫かい?」
―――何が「空気を乱してる」だよ―――
―――何が、「大人になれ」だよ―――
「空気を乱してんのも、大人になんねぇといけねぇのも……俺じゃねぇか」
「来栖……」
確かにあいつは吉原を傷つけた。
けど俺は、暴言を吐いてあいつを傷つけた。
「これじゃあ、どっちがガキか……
わかんねーよ……」


