「え、でも……いいんですか?」
「ちょっと待ってよ母さん。俺は行かな、」
「いいのいいの。ほら、デートしておいで」
エプロンのポケットに手を突っ込んで何やらがさごそしてから、お札を何枚か取り出し、俺に手渡す。
「ありがとうございますっ!」
「はぁ~……」
ああ……ダメだこりゃ……。
母さん、聞く耳持たずだわ。
思わず受け取ってしまったお札をぼんやりと見つめる。
つーかさ、なんで金がエプロンの中から出てくるわけ?
あーっ、くそ。
頭をガシガシと搔く。
「……用事が済んだらさっさと帰るぞ」
「うん!」
ふわりと綻んだ口元。
その偽りのない笑顔に胸がどきりと鳴る。
それに気づかないふりをしながら、俺たちは家を出た。


