何も考えられなかった。

あれだけの事があったのに、涙一つさえ流れては来ない。

ただただ、家に帰る為にいつもの道を進んでいる。

はずだった......

もうすぐ見慣れたアパートの玄関、そう思って俯いていた顔を上げると、そこは全く知らない土地で。

辺り一面、絵の具の黒をぶちまけたかの様な暗闇で、その中にぽつんと佇むアンティークな店があるだけ。

不安に駆られる中、ここで唯一の灯りを求めてその店に近寄る。

店先に看板が掲げてあった。

その店の名前は......