？「すごく、綺麗な髪ですね。フワフワしていて。」
そう言って、彼は私の髪に少し触れた。普通なら知らない男の子にこんな事されたら嫌なはずなのに、何故か嫌ではなかった。むしろ、ドキドキし過ぎて、何も出来なかった。
心臓の鼓動が徐々にだけど、どんどん早くなっている。
？「顔…真っ赤ですね。」ニッと笑った。子供のような人懐っこい笑顔だった。
「か、からかうのは辞めて下さい。」
俯きながら精一杯の声で言った。今は前を向くことが出来なかった。きっと、自分の顔が赤くなっているから。
？「…今日、僕の事を見ていましたよね。隣にいた人は、彼氏かなんかですか。」
「へっ？違いますよ。彼氏とかじゃないですよ。私、恋愛とかあんまり分からなくて。」
？「…そうなんですか？てっきり彼氏なのかと。貴方は、綺麗な人だから彼氏とかがいるのかと思っていましたよ。」
言いなれてるのかな。でも、ドキドキしてしまう…。
そうだ、気になっていた事を聞いてみよう。
「どうして、あの時桜の木を見て、悲しそうな顔をしていたんですか？」
驚いたような顔をしていた。そんな事を聞かれるとは思っても見なかったからだろう。
？「…そんな風に見えましたか。そうですね、父がよく、話してくれた恋愛の話に出てくるのに似ていたからですかね。思い出に浸っていたというんですかね。」
空を見上げながら彼は答えた。風が吹き、彼の髪がふわふわとなびいていた。その横顔はとても綺麗だと私は思った。男とか、女とか関係なく、彼は綺麗な人だと。