折れた翼





「なんでここに連れてこられたか
気にならないのかよ…」



「んー、分かってるから
聞かないだけだけど?」



だって、あんたの優しさで
今 私はここに居るんでしょ?

と…淡々と答えた女に
俺はなぜか胸がキュッとなった。



ここに着いてからも頭を離れない。

ちらちらと見えるなんてものじゃない。

くっきりと残る痣に胸が痛む。



「お前、大丈夫か…?」



痣だとは、言えなかった。

ただ遠回りな言葉しか
かけられなかった。



「……大丈夫」



そう言ってフイっと反対を向いた
女に俺は、もう何も言えなかった。