千代紙の小鳥

校舎を出るため校門まで真っすぐに伸びる廊下を俺は曲がり、中庭へと出れる渡り廊下も渡って屋上へと続く階段を上る。


タン タン タン タン


足が階段を一段上る度に響く音は何故か少しゆっくりとしていて。


(あ、)

鍵がかけられている筈のドアの数センチ開いたところから雨声が校内へと入ってきている。


俺はその真新しいそれのドアノブに手をかけ、キイと鳴らないドアをゆっくりと開けた。


「……」


そのドアの向こうに見えた雨景に言葉を失ったのは、俺が口数の少ない人間だったからではないだろう。関西弁でマシンガントークをする友人も、よく通る声を持つ担任も、恐らく今の俺と同じ様になった筈だ。




それ程に、俺の目の前にある雨景は美しかった。