千代紙の小鳥




プクプク・・ プクプク・・



(…ん、?)


ふと、奪われた意識の中で音が聞こえた。いや、聞こえたという表現は少し違う。

響いた。の方が近いと思う。



左手で頬杖をつきながら窓の外を眺め続けていた俺の意識はその音によって現に戻された。

周りを見るともう誰も教室には残っていなかった。


左手を机の上へと静かに落とすと、カサ・・・と紙が擦れる音がして。机の上には”進路希望調査”と書かれたA4プリントと、破ったリングノートにでかでかと”クール馬鹿野郎”と書かれた紙。


(たぶんずっと叫んでんたんだろうな)

ありありと浮かぶ叫ぶ友人と無反応な自分。


(全然気づかなかった。)

時計を見ると授業が終わってからそこまで経っていない。


恐らくついさっきまで友人はそこにいたのだろう。廊下で叫んでいる関西弁が聞こえてきた。


「クール馬鹿野郎!!!」

(今回は悪かったな。でもその意味はわからない)






プクプク・・ プクプク・・

それは、水の中で生きる呼吸の音。