「冬馬?どうした?疲れた?」

「いや、大丈夫だよ。何か雪でも降りそうだなぁ…と思って……あ。」

「あ、雪だ…」

「都内に帰ったら、温かいものでも食べに行こうか?」

「うんうん!!鍋もいいなぁ~…おでんでもいいなぁ~」

「もっと洒落てるのを食べに連れてくよ」

「え!?いつもは、そんなの何だかんだ文句言うのに~。」

「……気が向いたんだよ。」

最後の白玉を頬張りながら冬馬は言った。私は嬉しくて、夕飯を考えて残すことにした。

お茶屋を出て、鎌倉駅まで寄り道をしながら歩いていく。
古着の店や、飛び出す絵本の店に寄った。

古着の店では、お互いどれが似合う、どれが好きを言いながら、散々ファッションショーをして、買わずに出た。
きっと店員は、迷惑だっただろう。

飛び出す絵本の店では、様々な絵本があった。人体模型の絵本は表紙を捲ると心臓の鼓動音がした。
洋書の飛び出す絵本は、日本ではあり得ないような飛び出し具合だった。
その中でも一番好きなシンデレラを買った。
カボチャの馬車はキラキラ光馬車になって飛び出していた。

「まいか、シンデレラ好きだよな」

「うん、小さい頃から大好きなの。」

「ガラスの靴誰が履かせるんだろうな」

「そりゃ、王子様か…冬馬だね」

「ガラスの靴があったらな」

少し照れた冬馬の顔が、ほんの少しだけ暗く見えたのはどうしてだろう。
私は、その時はまだ気がつけなかった。

冬馬のスマホが鳴った。

さりげなく、店を出た冬馬を見ていた。
何か弾けたような笑顔を見せたり、真剣な表情をしたり…

デート中に電話なんか出たことないのに…